史上最強のブラックコメディ映画『レザボア・ドッグス』


以前こういう話を聞いたことがある。アパートで一人暮らしをしていた青年がある夜、隣の部屋から聞こえてくる騒ぎ声で目を覚ました。余りのうるささに腹を立てた青年は隣の部屋に苦情を言いに行った。出て来たのはガタイの良い男だった。そして奥ではこれまたガタイの良い数人の男たちがポーカーをしていた。青年は文句を言おうか戸惑った。何しろ目つきの鋭い屈強な男たちだ。青年は恐る恐る「静かにしてもらえますか?」と言った。すると男が胸元からあるモノを取り出した。それは警察手帳だった。青年の隣の隣に凶悪犯罪者が住んでいてそれを見張っているのだ、と刑事が言った。ポーカーをしている理由は騒いでいれば警察とは疑わないからというものだった。青年は納得してすぐに部屋へ戻った。それからもどんちゃん騒ぎが続いた。
数日後、青年の部屋にあの時の刑事やって来た。刑事は犯人に逃げられたと青年に告げ居場所を知らないかと尋ねた。青年はこう答えた「僕はなんにも知りません。それよりあなたたちのことが犯人にバレたんですか?」すると刑事が渋い顔してこう言った。「いいえ、どうやら騒ぎすぎたようです」

これは日本で本当に起きた話らしい。馬鹿なことがよく起こるもんだ。そしてこの『レザボア・ドッグス』もそんな馬鹿なジョークに満ち溢れている。ブラックジョークだ。登場人物の殆どがジョークを言っている。この映画が好きな人は口を揃えて音楽が良いとか、耳を切るシーンが良いとか言っているが、本当の良さはそんなところじゃない。全編に渡って繰り広げられるどうでもいいジョークが素晴らしいのだ。中でも面白いのが強盗集団のボスが締りのない仲間たちに喝を入れる為に言ったジョーク。

「お前らはジョークが好きらしい。俺もジョークを言おう。ドジを踏んで拘置所に入った五人の男たちが失敗の原因を考えた。その中の一人がひらめいた。分かったぞ!計画を練っている間ジョークで笑ってたからだ……分かったか!これ以上は言わん!」

皮肉にもこれを言ったボスとそれを聞いた仲間たちは無残にも死ぬのだ。何故なら皆ジョークを言ったからだ。
そして皆気付いているのだろうか?六回観た辺りで俺は気付いた。いつも真面目なMr.ピンクが唯一生き残るのだ。つまりこのレザボア・ドッグスという映画はふざけてジョークを言った奴が死ぬという、まるで旧約聖書みたいな映画なのだ。そのくだらなさがまた面白い。
20090706003515

 


オシリ・ギャラガー