恐竜の卵


 

正月、彼女と上野の国立科学博物館で開催されていた「大恐竜博」に行った。

朝からビールを飲み、マックで1,300円分のつまみを購入。

路上パフォーマンスを見物したり、段差に腰をかけ人通りを眺めたり

地図を見て現在地を確認したり、ふと足を止めて写真を撮ったり

ふらつきながら、何の気なしに「大恐竜博」に入ってしまった。

 

恐竜というのも色々あるらしい。

その名の通り、恐ろしい竜がいる一方

その名の通り、恐ろしくない竜もいるらしかった。

シックな色合いの無骨な恐竜もいれば、

志茂田景樹みたいなカラフルな恐竜もいるらしかった。

今までの人生、恐竜に興味を持ったことなんか一度もなかったが

初めて親しみを感じた。

子連れ家族の二倍以上の早さで全てを見終わった。

まだ時間は一時半、外には行列ができていた。

 

その後、山手線に乗り新宿に移動。

南口出てすぐのシネマカリテで『ウォールフラワー』という映画を見た。

オリオンビールを2本、彼女は氷結とピザポテトを買い足し

ほぼ満席状態の中、座席の端っこの方に座った。

エマ・ワトソンをはじめとした若手俳優陣の演技は奇跡に近い。

主人公の男の子が周りに溶け込めずにいる傍観者=ウォールフラワー(壁の花)ならば、

ヒロインはまるで桜のように、紫陽花のように、向日葵のように、秋桜のように

そして薔薇のように、様々な表情を見せながら心を離さない。

すばらしい映画だった。

すばらしい映画を見ると、どうしても言葉が足りなくなる。

ただ唯一の減点は、静かにピザポテトを食べようと、

彼女が大きく口をモグモグしている姿が気になったことくらいだ。

 

ほとんど一日が終わってしまった。

二人とも恐竜のことなど忘れかけている。

大久保まで散歩をし、ラーメンを食べ、

帰りの電車に座っている。

ふと彼女が呟いた。

 

「あーあ、恐竜になりたいな」

 

聞こえない振りをした。

そして、そんな恐竜の卵をそっと温めることにした。

 

高野 百万石