PU・PU・PUのPU


なんてこった!街のあらゆるところから喫煙所が消えてるじゃねぇか!

 

そんなときこそ煙草を一本。と、いうことで始まったプカプカ・プロパガンダ・プロジェクト、通称プププのプ。これは煙草好きの、煙草好きによる、煙草好きのための、煙草コラムです。ここでは煙草にまつわる様々な文化の紹介と共に煙草を吸おうかなと思っている方、或いは、近頃流行っている禁煙をしようかなと思っている方々の喫煙活動(癌になるまでの)を我々JISCOMが『勝手に吸ってろ!』ってな感じで応援していきます。

 

『コーヒー&シガレッツ』

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世の中には煙草を吸っている人でないと楽しめない映画がある。ジム・ジャームッシュの『コーヒー&シガレッツ』がまさにそうだ。正確には非喫煙者でも十分面白味のある映画だが、喫煙者はさらに倍、ドン、である。どんな内容かというと、ただコーヒーを飲んで、ただ煙草を吸って、ただ会話をするだけ映画。全編モノクロでカット割りも少なく、おまけに登場人物がころころ入れ替わる。しかし一瞬たりともダレることがない。それはジャームッシュ自らが体験している煙草を吸っているときのあのくだらなさを映画に反映させているからだ。

煙草は一種の麻薬だ。ニコチンはドーパミン神経系を活性化させる。だから喫茶店や居酒屋やバーなんかで煙草を吸っている人はみんなラリっている。その空気をカメラに収めたジャームッシュ。噎せるほどくだらない。それを好きな俳優やミュージシャンにさせる彼もまたくだらなくもあり、粋狂で素晴らしい。一方、非喫煙者がその部分を観るとどう思うのか?そうまさに煙草が吸いたくなるのだ。

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イギーとトムが禁煙をしている様子。

 

現に俺はこの映画の影響で煙草を吸い始めた。十八の春。映画の専門学校が春休みになり福岡の実家に帰省し、思う存分暇を持て余した俺は仕方なくレンタルしたDVDを観ていた。するとなんだか身体がそわそわして落ち着かなくなった。妙に煙草が吸いたいのだ。それまでヒステリックな母親とゴリラみたいな親爺に煙草は『悪』と植えつけられていた俺は煙草に感心が無かった(現在はわかばを吸っています)。だがロベルト・ベニーニやスティーヴ・ブシェミが俺を誘惑する。

そしてイギー・ポップとトム・ウェイツのストーリーで俺はオチた。禁煙をしているイギーとトムが「オレは禁煙しているから煙草を吸ってもいいんだ」「やめたんだから堂々と吸える」とワケの分からん禁煙論を会話の最中に打ち立てた。

そこで一時停止。俺はすぐにコーヒーを入れ、映画を観ながらそれを飲んだ。なんか物足りない。外に出て誰かに会おうと思っても友人たちは就職して忙しい。でも、ぶっ飛ばなくっちゃ!俺は近所の酒屋に駆け込み、ズラッと陳列された煙草を眺めた。「どれにすれりゃあいいんだ」。酒屋のオヤジにジロジロ見つめられながら俺は自分の名前であるケントを一箱買った。これで俺はダジャレオヤジと煙草税を払う一員の仲間入りっ!(現在はわかばを吸っています)。

家に帰ると早速、ベランダに出て仏壇から持って来たマッチで火をつけた。まず何度か咳き込む。次に口の中いっぱいに広がる苦味を堪能する。それから徐々に煙を舌から喉、喉から肺へと侵入させていく。すると身体の中で大滝詠一の恋するカレンばりにスローな曲がかかった。これがヤニクラか、と俺は困惑しながらごみ箱に腰を下ろした。ベランダからは真っ赤な夕日。それが沈むと共に心地よい目眩が始まって、俺の止まっていた青春の時間がゆっくりと、ゆっくりと流れだした……

 

あれから六年。時を経て立派な大人になった俺はこう思うのだった。

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ハッハッハッ。ところで映画の中でトム・ウェイツが「俺たちは『コーヒー&シガレッツ世代』だ」と言っていたのを思い出した。そこでふと一つの疑問が浮かぶ。じゃあ平成の日本に生まれ、どうしようもない現代を生きる俺はミルク&パンケーキ世代なのか。プププのプ。そんなこんなでさっきTSUTAYAに寄ったらコーヒー&シガレッツは三本すべて借りられていた。どうやら喫煙所は消えても煙草や喫煙者は消えそうもないようだ。

 

オシリ・ギャラガー