『大人になればvol.16 〜我が心のバルボアさん編〜』


 

 

 

バルボアと聞いて、みなさんピンと来ているでしょうか。

あまりにも彼のファーストネームが有名になり過ぎでしまい、

というよりも映画のタイトルであるが故に、ファミリーネームをパッと連想できる人は少ないでしょう。

別にEXILEのATSUSHIやTAKAHIROのように

商業的な意図で忍ばせている訳ではないでしょうが、どうにもこうにも日の目を見ないバルボア。

ちなみに歴史上結構有名らしい”バルボアさん”としては、

ヨーロッパ人で初めて太平洋に到達したスペイン人探検家バスコ・ヌーニェス・デ・バルボアさんがいるらしい。

パナマの通貨単位は、深いことはよく知らないが、彼の功績を記念してバルボアらしい。

1ドル=1バルボア、紙幣はドル紙幣のみで、バルボアは硬貨しかないらしい。

ちょっと可哀想な扱いを受けているバルボア。全てWikipedia情報です。

そんな話はさておき、今回スポットを当てる”バルボアさん”は

映画『ロッキー』でおなじみのロッキー・バルボアさんである。

 

 

ロッキー・バルボアさんとの初めての出会いは20歳の時。

レンタルした『ロッキー』のDVD。

しかし前半部分を見ただけでレンタルバックしてしまった。

それからしばらくして、2度目の出会いは去年、24歳の時。

『クリード チャンプを継ぐ男』を丸の内ピカデリーで見たのだが、

既におじいちゃんになっていて、ガンに侵されていた。

どうやらバルボアさんの元ライバル・アポロさんの息子のトレーナーになり、

『ロッキー』の前半部分で見せていたチンピラ具合とは180度変わっていた。

エイドリアンさんに先立たれ、子供とは距離が出来てしまっているなどの情報が

個人的にはフライング気味に入ってきてしまった。

バルボアさんにも色々あったんだなと思いながら、

隣にいる彼女に涙を見られまいと必死に堪えながら、尋常でない感動に震えた時間は忘れない。

バルボアさんもクリードさんも、マイ映画ライフの中で最高の漢だった。

そんな感動もつかの間、20歳のあの時にちゃんと『ロッキー』を見ておけばもっと感動できたのかもしれないと、

今となっては本当にしょうもない気持ちが頭の中を支配し、『ロッキー』食わず嫌い症候群に陥ることとなったのだった。

 

 

それから1年。昨日のことである。

彼女が牡蠣にあたってしまった。デートの予定が急になくなり暇になった。

ふとパチンコ店に寄って4万円ほど儲かった。

どうせなら、なんか買おうかなと思って入った新星堂。

そこで目に入ったDVDセールコーナー。

1枚1,000円とか1,200円とか、そんなに元値から割り引いて儲かるんかいと突っ込みながら

縦横無尽に隈なく陳列棚をチェックしていくと…

『ロッキー』シリーズ全部あるじゃん!

6枚買っても1万円しないじゃん!全部買っちゃえ!一気に行っちゃえ!

『ロッキー』食わず嫌い症候群を治したのが、”金銭的な余裕”であったことが恥ずかしい。

財布の紐が極端に緩くなっているのを良いことに正に勢いで、

『ロッキー』から『クリード』まで、プラス『ストレイト・アウタ・コンプトン』と『オデッセイ』もあわせて購入。

まだお金が余ったから、これまでの人生で最もおしゃれなメガネを購入。

まだまだ若干余ってるから、3,000円でスコッチを購入。

家に帰って、新しいメガネをかけながらロックグラスにスコッチを注ぎ

『ロッキー』のパッケージのビニールを丁寧に剥がしテレビにセット。

約2時間後、バルボアさんの勇姿に胸を打たれた午後11時、『クリード』で貯めていた分もあわせて

涙がポロポロこぼれ落ちた。

 

 

話を少し戻そう。

そもそもバルボアさんとの初めての出会いの時、DVDをなぜ前半で止めてしまったか。

実ははっきりとした理由がある。

それは、バルボアさんとエイドリアンが初めてキスをするあのシーン。

『ロッキー』を見る1週間前、当時付き合っていた年下の彼女に壮絶にフラれていた。

その子とはバイト先で出会い強烈に惹かれあい、俺には元々付き合っている子もいたのだが、悪く言えば乗り換えた。

それから約3ヶ月間、まあ色々あったけど幸せな日々だったと思う。

そして突然切り出された別れの言葉「始まりが良くないから、幸せになれないと思う。別れよう」メールだった。

おいおい今更かよ、なんて冷静なツッコミすら入れられず

それこそ文字通り憔悴しきり、飯を4日も食べられずブラックニッカを四六時中飲み続けた。

寄りを戻そうと連絡を取っても、まるっきりダメたった。

彼女のために止めていたたばこを吸い始めた。恥ずかしい話だが、験担ぎでHOPEを買った。

験担ぎはまだ終わらず、地元にある人気のない神社に行って1,000円札を投入して神頼みもした。

それでも叶わぬ恋への憂い、安いアルコールの安い酔い、感じたことのない空腹。20歳の俺には早くも限界だったのかもしれない。

心配した母親が不意に出したそぼろご飯。一気に食いついた。無性に美味しかった。

救われた気がしたその瞬間、涙が急に止まらなくなり、そぼろご飯はしょっぱくなった。それがうまかったのかもしれない。

心身の回復を大いに感じながら、久々にDVDでも借りようとTSUTAYAに行った。

今の俺にエネルギーを与えてくれるのはこれだろうと手に取ったのが『ロッキー』だった。

で、二人のキスシーンを見て…そんな簡単に行く訳ねえだろ!とブチ切れ。ふざけんなクライシスに突入。

女ってものはもっと複雑なんだよ!そんな女は世の中にはいねえよ!と若気の至りが爆発したのである。

その時、傷んだ心で受け付けることができた映画は、

『クレヨンしんちゃん モーレツ‼︎オトナ帝国の逆襲』と『タクシードライバー』だった。

 

 

『クリード』のバルボアさんに出会うまで4年、彼とエイドリアンとの関係を祝えるようになるまで更に1年。

まだまだ若気の至りを見せるバルボアさんのことを理解出来るまで長くかかってしまった。

なぜエイドリアンとあんなにトントン拍子でうまくいくことが出来たのか。

今ならその理由は分かる気がする。若干照れながら言おう。たぶん、愛だ。

20歳の時の俺は、”分かった気でいる愛”しか知らなかったが

25歳の今の俺は、”分からないままで良い愛”を知った気でいる。若干の進歩である。

兎にも角にも、バルボアさんとの関係はこれからより深くなりそうだ。

とりあえず現状を報告しておくと、ちょうど2まで見終わったところ。

抜け殻になったバルボアさんに対して、エイドリアンさんの「勝って」の一言がなんと力強いこと。

たまらない程『ロッキー』は愛の物語でした。

我が心のバルボアさん、昔の彼女にフラれたせいであなたのことを嫌いになり

結婚を意識している今の彼女が『クリード』を見たいと言ってくれて、

さらに昨日牡蠣にあたってくれたおかけで好きになりました。

今回は色々と話し過ぎました。以上です。

 

『LOVE BALLAD』GEORGE BENSON