今だからこの一枚『YOSHINO FUJIMAL』芳野藤丸


 

このアルバムは「別格」だ。

そんじょそこらのアーティストとは違う圧倒的に洗練されたサウンド、

清々しくまっすぐ突き刺さってくるような歌声など全てにおいて「別格」である。

リリー・フランキーとみうらじゅんをミックスさせたような

あまりポップではない風貌からは想像できないほどに’シティポップ’。

一言に’シティポップ’と言えど色々とあるのだが、

芳野藤丸ほどダンディにセクシーにクールに’シティポップ’を体現しているアーティストは

世界を見渡してもそう多くはないだろう。

繰り返しになるが、このアルバムは「別格」なのだ。

アルバムのオープニングを飾るこの曲にその全てが凝縮されている。

 

 

「Who are you ?  feat.桑名晴子」作詞:小林和子 作曲:芳野藤丸

 

 

Who are you? サングラスを横切る

陽灼けのイカしたお前は 何処から来たのか?

Who are you? 少し手をやく女も

素敵さなんて笑えば 涼しい顔だね

 

サイドシートに埋めた肌の火照り 朝が来るまで黙って寝顔見てた

やさしすぎて駄目な男に 一度位なっていいよね

 

 

「やさしすぎて駄目な男になっていいよね」なんて言える人いないでしょ!

そんな奴、ただの馬鹿か芳野藤丸かどっちか。

爽やかな雰囲気の中、かなりイカした感じかと思えば

一晩中寝顔を見ちゃうくらいウブってのがまたいい。

失われることのない童貞感。

これもきっと、シティポップの肝となっている部分なのかもしれない。

 

全8曲のうち、前半が「in the DAY time」後半が「in the NIGHT time」という構成の中

疾走していく前半とは違い、後半はアダルティな感じがインフレーション。

とは言っても2曲目は「Midnight Plus 1」って’NIGHT’の延長戦というまさかの展開もあったが、

そこはご愛嬌ということでまずは1曲どうぞ。

 

 

「Girl’s in love with me」作詞:Jeff Keeling 作曲:芳野藤丸

 

 

Girl’ in love with me

I’m the lucky guy

Makes me feel so good

I could touch the sky

All of the guys in the world and the girl’s chosen me

 

 

なぜか急に歌詞が英語になるのだが、

これはおそらくアメリカ人の彼女が出来たのだろう(ただの想像です)。

「俺はなんてラッキーなんだ!世界中の男の中から俺を選んでくれた!」

と臆面もなく言えてしまう、NIGHT timeでも本領発揮の心地よい童貞っぽさ。

 

しかし次の曲「Shan-hide Night」ではお相手が中国系アメリカ人なのではという疑惑が生じ、

しかも「闇に消えてく Dead-End-Love」という歌詞で締めくくられる。

その次は「Now What I’m Looking For」。

英語詞のこの曲では、再びアメリカ人と恋をしたことを露呈。

そして、アルバムのラスト、NIGHT timeを締めくくるのは「Pretender(嘘つき」。

その歌詞の一部をご紹介しよう。

 

 

よれたCoatに顔を埋めて ブルックリンから拾うYellow Cab

ビルが指す夜の翼で 南の島へ飛ぶはずだった

(中略)

ひとのざわめく空港ロビー フライト時間はとうに過ぎている

彼女はひとつため息をついて 回転ドアの向こうに消えた

愛って言葉を破り捨てたよ

 

 

まさかまさかの早すぎる展開についていけない。

とにかくひとつ確かなことは、またアメリカ人にふられたということである。

なんて悲しい出来事だと同情するとともに、

「ちょっとお前深入りしすぎだよ!」と友人として注意したくもなる。

ほっとけない男だ。

このアルバムの楽しみ方として適切なのかは分からないが、

誰が聞いても分かるサウンド面だけでなく、

そのサウンドやテーマ、また芳野藤丸という男から連想された歌詞=物語の面白さも

「別格」であるということを感じていただければと思う。

 

ちなみに芳野藤丸さんは「木綿のハンカチーフ」や「新世紀エヴァンゲリオン」「天城越え」

といった誰もが知っている名曲へのギタリストとしての参加、

また山口百恵、中森明菜、西城秀樹といった錚々たる面子への楽曲提供など

とにかく「別格」の存在。

今では、伝説のグループSHOGUNの再結成・アルバム発売が話題になったり色々ありますので

詳しいことはWikipediaとかで調べてください。

 

「キングオブシティポップ」かつ「永遠の童貞家(DAIGO風にいうとEDT」として、

もしかしたら肩書きは間違っているかもしれませんが

みなさんぜひ一度お聴きください!

 

高野百万石