今だからこの一枚『harvest songs』 松たか子


『アナと雪の女王』で魅せた、まさに本物の歌声・表現力。
『夢売る二人』で見せた、妙な女のいやらしさ。
それでいてスーパーヘビースモーカー、という事実。
そして妊娠と、話題に事欠かない松たか子さんであります。

そんな松さんのアルバム『harvest songs』。
このアルバムの素晴らしさを一言で表すなら「強さ」だ。
恋愛などにおいての複雑な感情を表現した曲であっても、
真っすぐ、何の飾りもなく、しなやかに力強く歌いきる。
アルバムのタイトルの通り、収穫したての新鮮な「強さ」に溢れた一枚となっている。

『ほんとの気持ち』作詞・作曲:小田和正

小田さんがこれを歌ったら、‘なよっちい’感じになっていただろうが、
松たか子が歌うとなんて力強いことだろう。
片想いから始まる物語が、ちょっとした強がりなんかしちゃって
でもやっぱり寂しくなって切なくなって。
そうしてようやく「きっとあなたは違うんだ 他の人とは違うんだね』と気付く。
初めての夏を迎える少しの時間の中で揺れ動く気持ちを
繊細に描いた小田さんも素晴らしいのだが、
それをしっかりと一人の女性の生きる姿として表現した松さんも素晴らしい。

『夢のほとりで逢いましょう』作詞・作曲:Skoop On Some Body

Skoop On Somebodyが作詞作曲ということでアーバンな雰囲気に満ちている。
『ほんとの気持ち』から数年後の未来を描いているようだ。
「いつかあなたを忘れ誰かを愛すだろう だけどあなたは僕にとって永遠の恋人だから」
と男性目線のロマンチック過ぎる言葉に続いて「夢のほとりで逢いましょう」。
ともすればただ恥ずかしいだけの情けない曲に聴こえてしまうが、
こんなに堂々とステージを支配するように表現する姿は、
マシンガンを抱えたスタローンのように逞しい。
そして全てを歌いきり颯爽と舞台を後にし、夫のギタープレイに光を当てる。
こんなに‘漢’らしさと‘奥ゆかしさ’を兼ね備えた人間はいないだろう。

『夢で逢えたら』作詞・作曲:大滝詠一

アルバムの音源がどうしてもないのでこちらで。
Tシャツ姿でこの曲を歌うひとなんていないですよね!
最近は鈴木雅之とデュエットで『幸せな結末』を歌っている様に、
大滝詠一さんのことが本当に好きなんだなと思う。
今回取り上げることの出来なかった『26:00』という曲は、
キンモクセイでバリバリのシティポップをきかせた伊藤俊吾さんが書いているし、
『パンを一つ』という曲では「お前を抱きたいとあなたにそう言われて」
なんて歌詞から始まるように昭和歌謡曲感がたっぷり。
流行りに走ることなく自分の好きなことや思ったことを、
ありのままに表現してみせる。

今回の『harvest songs』必聴です。
「ありのままで〜」の原点を知ることができ、
またJ-POP史に確実に残るであろう名盤です。たぶん。