今だからこの一枚『MUGSHOT』浜田金吾


犯罪者の顔写真。
これがMUGSHOTという言葉の意味である。
アルバムジャケットには、現像したてのモノクロ写真。
ニヒルに決める、天才シンガー浜田金吾。
なぜ、このタイトルになったのか
なぜ、こうも目立たないジャケットにしたのか
なぜ、このアルバムが素晴らしいのかを紐解いていこう。

 『GATSBY WOMAN』作詞:大津あきら 作曲:浜田金吾

 サラリと別離投げつけて 消えてゆく北ウイング
 最後まで強がりな女 貴方はギャッツビー・ウーマン
 恋の傷跡抉られて 置き去りの空港(エアポート)
 何時だって煙に巻かれて 生きてきた俺さ
 甘い裏切りなら 悔やみはしないけど今は

 ギャッツビー・ウーマン in the sky-high 眼差し遠く
 ギャッツビー・ウーマン 二度とは戻らない
 捨ててくれ いいさすべて
 気流の中 俺を飛ばしてくれ

アルバムの一曲目を飾るこの曲、ジャケットを見ただけでは
全く想像出来ない様な爽快感に溢れている。
とにかく豪快にフラレてしまい、ヤケになって気流の中を飛ばしてくれなんて言って、
なぜか最高のシティポップの名曲に仕上がる。
さすがにどん底に落ち過ぎだろ!とも思うが、
それを気持ちいいサウンドをちょうどいいハスキーボイスで歌っちゃうもんだから
これは浜田金吾独特の世界観と言えよう。
いつも煙に巻かれて生きてきた男にしか表現出来ない極みだ。

 『GIRLS』作詞:大津あきら 作曲:浜田金吾

http://www.youtube.com/watch?v=W4NGO8A4KWc

 Wow…who girls もっとそばに来て
 Wow…who girls もっと傷ついて
 Wow…who girls 泣き疲れてもいいから

 男たちの表情に溶けて身を焦がし 優しくなりずるくにもなり
 そしていつか夜の片隅へ
 甘く抱かれてくれ脆い程 ひとしずく並みだこぼれて来るまで
 (中略)
 明る過ぎる愛想で腕に肩にもたれ
 踊り明かしたあの女もあの日 急ぎ足で土曜の朝へと
 心酔わせてくれ触れる度
 無邪気色の素顔 浮かび出るように

とうとうGIRLS=少女たちに手を伸ばしたか!?
ギャッツビー・ウーマンに懲りて、次は若い少女たちにそっと寄り添おうとする。
全8曲のアルバムにおいて後半最初の5曲目で、とうとう罪の香りを漂わせる。
気流の中を飛ばされて相当ボロボロになって街に帰ってきて、
若い少女に「もっと傷ついて」と語りかけるとは、かなりマズい状況。
身を落とすって、まさにこういうことでしょう。
それでも、土曜の朝には別々の道へと向かう。
これぞブルースというか、裏シティポップ。
一体、いつになったら煙に巻かれなくなるんだ!

 『INK-BLUE NO YOAKE』作詞:大沢孝子 作曲:浜田金吾

 おだやかな寝顔が 最後に見た君の表情
 ほんのすこし ほほがまだぬれていた
 階段のおどり場 追いかけてくる気がしたけど
 ぼくの影とぼくの靴音だけ
 流れないこの川 いつかみんな流されていく

 人は愛のないこの街を愛しているんだ
 まだ消え残る Morning Star 夜明けの Hollywood Blvd.

 着なれないジャケット はおっているような毎日
 浅い傷がまとわりついている
 夢だけが何より大事だったあの頃
 君と何を引き換えにしてたのか

ここでようやく煙に巻かれていた理由が判明する。
女を大事にしないで、ずっと夢を追いかけていたのだ。
そして迎えたインクブルーの夜明け。
やはりまたしても、一人取り残されてしまう。
もうここまで来ると、自分と世界との境目がなくなってしまい、
‘逆世界の中心で愛を叫ぶ’状態に突入。
「人は愛のないこの街を愛しているんだ」という名言が生まれる。
これだけ聞くとただの暴言かもしれないが、
アルバムをずっと聞いて最後にこの言葉に辿り着いたならば、
また違った感情が生まれてくるだろう。
女も夢も掴めず取り残された男一人。
かすかに輝く星の下、少し温かい音に囲まれながら
ため息のように呟いた言葉である。

このアルバムがいかに素晴らしいかは、きっと分かっていただけたはず。
洗練されたサウンド、ナイーブで芯のある歌声、独特な悲恋を描く歌詞。
浜田金吾にしか築くことのできない男の世界。
生きてるのか死んでるのか分からない抽象的な表現の曲が多い今、
街で生きる男の「生き様」を真っ当に見せつけるこのアルバムは、貴重だ。

ただ、あまりにもフラレまくっているんだから、
ちょっと男としてヤバいぞ!っていうのが控えめなジャケットになった理由だと思う。
そのジャケットの中心にあるMUGSHOT=犯罪者の写真は、
きっと「俺がぜんぶ悪かったんだ…ごめんよ」なんて感じで
煙に巻かれて過ぎて最悪の自己嫌悪状態ということだろうか。
正直、よく分かりません!

みなさん、とにかくこのアルバムを今聞かずしていつ聞くの!
みなさんなりのMUGSHOT論をお聞かせください!
23歳の男にはちょっと早過ぎました。

高野百万石